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□ 2012/02/14 犬を食べるのは野蛮なのかを考えてみた

犬は古くから身近な動物だ。それ故か犬を食用にする習慣は、洋の東西を問わず世界各地(今は食用にしない地域を含め)に見られる。特に日本を含め農耕を中心とした文化圏ではこの傾向が強く、牧畜・遊牧・狩猟等の社会では余り一般的ではない。この違いは犬がその社会にとって価値があるか否かによるものと考えられる。犬は適当に餌(人の食い残し)を与えておきさえすれば、勝手に逃げ出す心配もなく、手間のかからない重宝な活きた食料だったのだろう。

タイのアカ族が食用とする犬の解体
Scrap to dog by akha village near the Chiangrai / Thailand

日本では天武天皇の治世(675年)に最初の肉食禁止(牛、馬、犬、猿、鶏の五畜)の勅令が公布されている。日本書紀に「庚寅詔諸國曰 自今以後 制諸漁獵者 莫造檻 及施機槍等類 亦四月朔以後 九月三十日以前 莫置比滿沙伎理梁 且莫食牛 馬 犬 猿 鶏之肉 以外不在禁例 若有犯者罪之」とある。この勅令後も繰り返し禁止令は出されているので効果はなっかたのだろう。
注目したいのは、「亦四月朔以後 九月三十日以前」の行で、肉食禁止は毎年4月~9月までの農耕期間に限られていたことだ。また、食用と狩猟が禁止されたのは、牛、馬、猿、犬、鶏で、鹿と猪(イノシシではなくブタ)はこれに含まれていない。
牛や馬は農耕や重い荷物の運搬には欠かすことが出来ず、鶏は神の使いとする神道に配慮したからと考えられる。また鹿は新芽を食べ、猪は夜間に農作物を掘り起こして食べてしまう。共に農耕の妨げとなる。しかし、猿と犬が禁止された理由は何だったのかは不明だ。因みに、猿を食用にするのは中国だけだろうが、日本でも犬はその当時既に食べられていたことが窺える。


日本での肉食禁止の理由として度々上げられるのが「涅槃経」の戒律に従ったと云う説で、① 牛は農耕で重要な「田畑を耕す」働きをする ② 馬は移動や荷物の運搬に重宝する ③ 犬は夜に吠えることで危険を知らせる ④ 猿は人間に似ている ⑤ 鶏は朝、時を告げるからだと言うものだ。
しかし何事にも「本音と建前、表と裏」がある。肉食禁止の勅令(675年)で民衆に食用が厳しく禁じたが狩猟や捕鯨で得られた肉は半ば公然と流通していたようだ。ましてや身近な犬となれば「何をか言わん」だろう。
イエズス会宣教師ルイス・フロイスの記録書「日欧文化比較」によると、「ヨーロッパ人は牝鶏や鶉・パイ・プラモンジュなどを好み、日本人は野犬や鶴・大猿・猫・生の海藻などを……」とある。また 「我々は犬は食べないが牛を食べる。彼らは牛を食べないが家庭薬として見事に犬を食べる」と書いている。実に偏見の無い見解だ。

安土城内のフロイス来日(模型)

日本人は中国の医食同源の影響を受け、犬肉に薬効を期待して食べていたようだ。確かに中国では体力を消耗する暑い夏や、寒い冬に滋養強壮の為に好んで食べるし、韓国でも同じ目的で、陰暦夏至から立秋までの「庚」の日の中伏には暑気払い目的で食べる習慣がある。
肉を食べると身体が温まる。この効果は豚より牛の方が高く、犬もまた然りだ。動物の肉を食べると身体が温まることは古くから知られている。漢方では、肉には胃腸の働きを高め、筋肉を強化し、浮腫み(むくみ)をとる効果があるとされ、また尿の出も良くするとも云われている。現代の医学に於いても、動物性蛋白質は消化される際に胃や肝臓が活発に働き、身体が熱くなることが判っている。そしてこの身体が熱くなることを専門家は「食事誘発性熱産生」と呼ぶそうだ。
食事の際に汗をかく者は多い。特に肉類を食べなくともこれは起こる。単に代謝機能が働いているからに過ぎないようだが、更年期障害で汗腺のコントロールが失われた場合にも起こる。年寄りの汗はその場合が多いようだ。人間の体内では骨格筋が全熱エネルギーの約38%、肝臓が約12%を生み出しているのだ。

リロード

日本最古の本格的料理本として有名な「料理物語・寛永20年・1643年」 にも犬の調理法が載っているので、その当時は当たり前の食材であったことが窺える。また「落穂集・享保12年・1727年」には、「江戸の町方に犬はほとんどいない。武家方町方ともに、江戸の町では犬は稀にしか見ることができない。犬が居たとすれば、これ以上のうまい物はないと人々に考えられ、見つけ次第撃ち殺して食べてしまう状況であったのである。」としている。徳川綱吉の時代に移り「生類憐みの令」が公布され、犬は「将軍家の護神」とされ、犬のペット化(座敷犬・抱き犬)も進み犬食文化は衰退して行ったようだ。
戦中戦後(第二次世界大戦)の食糧難の一時期に、一部の者が犬を食べたとの記録もあるが、飢えによる特殊状況下のことで常食していた訳ではない。現在では一部の中国・韓国の料理店で出遭える程度になった。


中国や朝鮮半島では犬は新石器時代から食用とされ、日本でも縄文時代や弥生時代の遺跡から多くの犬の骨が出土している。 
西洋人(特にヨーロッパ人)は己の属する文化圏が犬を食べないからと、犬食の文化を忌避するのは如何なものか。牛を常食とする西洋人に対し宗教上のタブーで牛を食べない者がこれを非難したりはしない。鯨を食べるのも犬を食べるのも昔からある食文化だ。


ヨーロッパに於いても1910年頃パリ市内で犬肉店が開業したり、料理本が発刊されたりしている。1870年の普仏戦争当時には犬肉専門店をはじめ、猫肉店やネズミ肉店なるものまであった。また、その当時パリ市内では犬一匹見かけることがなかったと文献にはあるそうだが、包囲されたパリ市内では極端に食料が不足していた特殊事情もあり、一概に犬肉が常日頃からの食用対象であったとは限らない。下は普仏戦争当時 Le Monde Illustration(ルモンド・イラストラシオン・1870年4月)に掲載された Rochechuart(ロシュシュアル)にあった犬猫肉を扱う肉に肉を買い求める為に列をなす民衆の挿絵だ。

1910年頃,パリに犬肉店が開店したことを告げる横断幕

スイスでは犬肉の国内流通は禁止されてはいるものの、消費すること自体には問題ない。ドイツにしても1986年に犬肉の流通が全面禁止になるまでは食用にされていた。
過去にはヨーロッパ大陸で犬食は広く見られたが、イギリスだけは嫌悪感を抱く者が多い。これには牧羊や狩猟の友として犬が利用され、またペットとして愛玩対象としてきた歴史が長いからだろう。
机と椅子以外は4本足なら何でも食べると云われる中国人でも、香港では英国の支配が100年続いた影響で犬食に嫌悪感を持つ者が多い。現在は「猫狗条例」により犬食は禁止されている。同じく台湾でも2001年に犬猫を食用目的で屠殺することを禁じる動物保護法が施行され、その2年後には販売することも罰則対象となった。
滋養強壮なら個人的には「すっぽん」の方が遥かに好きだが…

《一部文章を管理人運営の別サイト”トッポギレシピと趣味のウキ・操体法”の”食の雑学”から引用》
    
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